フィレンツェで買った不思議スーツ
フィレンツェに「PRINCIPE(プリンチペ)」という老舗の服屋があります。その店は、狭い二本の路地に挟まれた不思議なV字の建物ですが、なんとメンズやレディスをはじめ、子供服から家庭用品まで扱う総合セレクトショップなのです。しかも、その店のすぐそばには型遅れ品や売れ残り品を販売するアウトレット店まで存在します。ですから私はフィレンツェを訪ねると、本店は外から眺めるだけでも、アウトレット店は必ず訪ねるようにしています。
先日も取材でフィレンツェを訪れた際、しっかりとアウトレット店には出かけました。実は他の安売り衣料品店で着替えのシャツをすでに購入していたため、あまり買う気もなく、なんとなくスーツのかかったラックを眺めていたのです。するとネイビーのスーツが一着。よく見ると、まだボタンホールも開いていない半完成品。“おもしろいなぁ”と思って手に取ると、異常に軽い生地でパッドも極薄、芯がなくて仕立てはヤワヤワ。いかにも“手縫い”の味わいです。試着すると、これがまた“誂えたようにピッタリ!”。本切羽(ただし、ボタンホールはまだ切ってなく、ボタンも付いていません)の袖丈も、パンツのウエストも、まさにジャスト・サイズ。“一体、どういうことだ?”と思いつつ、店のおばさんに値段を聞くと、「150ユーロ」と言うではありませんか! なんと日本円にして2万2500円ほど(とうとう1ユーロが、ほぼ150円になってしまいました・・・)。“こりゃもう買うしかない!”と速攻でお金を払って手に入れました。
ホテルに帰り、もう一度着てみると、たしかにソフト仕立てでサイズもジャスト、着心地も上々ですが、スタイルは微妙に古くさいし、ポケットの位置が異常に低くて、なんか妙。キャンセルされたオーダー品、あるいはソフト仕立てスーツの試作品(の失敗作?)かもしれません。いずれにせよ着用するにはボタンホールを切ってボタンを縫い付け、パンツの裾丈を詰めて仕上げなければなりませんが、その手間を考えても、これはお買い得だったと思います。妙なスタイルも、一種の“味”と納得することにしました。










